前回まで何度か感情と症状の関連性を取り上げてきました。
今回は、中医学という少し違った観点から心と身体の問題を掘り下げていきたいと思います。
まず初めに中医学とは何なのか?という部分をご説明させていただきます。
「中医学」
中医学(中国医学)とは中国の伝統医学になり、東洋を起源とする「東洋医学」の1つになります。
中医学の特徴としては、中国古代哲学の影響を受けた薬学、生理学、病理学などの基礎理論と、中国の数千年にわたるとても膨大な量の臨床実験をもとに構成されております。
病気を「ただの病気」として捉えるのではなく、「病気と人をみる医学」になります。
手足や内臓などを個々のパーツとしてみるのではなく、それらすべてが協力し合いまとまりあっている「個体」と考えます。
カイロプラクティックと似ている部分もあり、病気になる前の“未病”から病気に進ませない予防医学でもあるのです。
中医学を行う上での特徴としては3つあります。
- 整体観(せいたいかん)
「人も自然の一部」という考えのもとで人も自然界での変動によって影響を受けるという考えになります。
その際には自分の内部も様々な部位が影響しており、結局は外と内の両方が大事ですよという理論になります。
- 弁証論治(べんしょうろんち)
理論としての診断、治療法になります。
一人ひとりの体質や、発病してしまった病気の原因、また発病までの段階を分析したうえで、それを基にして適切な治療法を行います。
病気や局所的な症状を見るのではなく身体全体を観察し、情報を集めます。
そこで集めた情報を一つにまとめ、さらに分析し答えを導きます。
※具体的な診断方法は割愛します
- 未病先防(みびょうせんぼう)
この考えは発病するまえの段階からその方の体質を見ながら対応していき、未然に防ぐという考え方です。
(なんか調子が悪いな、、、)そんな小さな徴候のころからその方の体質にあった食事、休息、生活習慣を心がけ、しっかりと適切な対応を行うことで病気を未然に防ぐという事です。
簡潔に中医学についてご説明させて頂きましたが、次にコラムの題名でもある「七情」についてご説明させていただきます。
中医学では「喜」「怒」「憂」「悲」「恐」「驚」「思」の7つの感情の変化を「七情」と呼びます。
これらの感情が強すぎたり、長く続くと「五臓」(腎、肺、脾、心、肝)の気の流れに異常をきたします。
- 喜:「心(しん)」(心臓)
楽しすぎたり、喜びすぎると心の気が緩んだ状態になり、精神を安定させようとする作用が不安定になってしまいます。
- 怒:「肝(かん)」(肝臓)
腹を立てたり怒りすぎると、肝の気が上昇し、血を伴って頭部に上ります。
- 思・憂:「脾(ひ)」(胃腸)
度を越した心配事や悩みすぎで精神的な負担が増えると気が鬱結(うっけつ)し、脾の働きを失調してしまいます。
- 悲:「肺」
憂い、悲しみすぎると肺の気を抑えてしまい肺を傷つけてしまいます。
- 恐・驚:「腎(じん)」(腎臓)
何かを恐れる感情が強すぎると、腎の気が持つ作用を不安定にさせ、気が下がってしまいます。
また、急な驚きは気を乱し、心・腎の働きも乱れてしまいます。
この様に、感情というものは身体にサインとして現れる「症状」と関係しているとされており、メンタルケア、身体のケアの両方を用いていく事が健康を保つうえで重要だと感じます。
では、感情と症状がどのように関係しているかを中医学を参考にしてわかりやすくご説明させて頂きます。
「喜」と「心」の関係
「喜」は「心」との関係が深いとされています。
喜びという感情は適度であれば気分が良くなり血液や気の巡りも良くします。
この事から一見ネガティブな方面には働かないと思われますがそうではありません。
過度な喜びというものは気を緩ませ、結果として思考力の低下や集中力の欠如につながってしまうので、やはり喜びであれ感情のコントロールが必要です。
症状としては、無気力になったり、ダルさ、注意力の低下などが現れます。
「怒」と「肝」の関係
「怒」は「肝」との関係が深いとされています。
日常生活での適度な「怒り」は当人のやる気を沸き上がらせるなどプラスに働くことがありますが、あまりにも度を超すと気を上らせ、肝を痛めてしまいます。
症状としては顔が赤くなったり、血圧が上がります。
ほかにも頭痛やめまいがすることもあります。
「思」・「憂」と「脾」の関係
「よく考える」ということはとても重要ですが、考えすぎや思考が堂々巡りになるのはいけません。
この様な状態になると気が結んだ状態になってしまいます。
「ため息」というのも中医学の観点からすると、結ばれていた気を破り楽にするためだと言われております。
症状としては食欲不振や胃痛、下痢などがあげられます。
「悲」と「肺」の関係
「悲」は「肺」との関係が深いとされています。
「泣きたいときは泣いたほうがいい」とも言われておりますが、あまりにも悲しんで泣きすぎると気を消してしまい、免疫機能が低下します。
これによって「肺」が傷つけられてしまいます。
症状としては胸が苦しくなったり、呼吸が浅くなり倦怠感に苛まれます。
「恐れ」・「驚」と「腎」の関係
「恐」は「腎」と関係が深いとされております。
度を越える恐怖が長時間続くと腎の持つ機能を低下させ気が下がります。
また、とっさの状況による驚きは気を乱し、心、腎の働きも乱れてしまいます。
症状としては白髪が増えたり、失禁、流産などがあります。
カイロプラクティックと中医学は共通している部分が多く、とても深い学問になると感じます。
症状のある方は一度参考にしてみるといいヒントになるかもしれません。